心地よさは、隠れた配慮に支えられている
〈9920〉
https://anity.ootaki.info/9920/

「ビフォー・アフター」という、リフォームのテレビ番組があります。もちろんこれは、「住まいのビフォー」と「住まいのアフター」を指しています。しかし、星合さんのお住まいのリフォームで、もっとも変化したのは、設計者である私自身でした。と言うのも、星合さんからは、たくさんのことを教わったからなのです。

私が当時、朝日新聞に連載していたコラムが目にとまり、以前から計画していたリフォームを、お願いしたいと連絡をいただきました。初めて訪問したときに、ニコニコと記事のスクラップ帳を見せていただきまして...。心地よさ、 ほんとうの住まい( 2017.09.08)
2019.12.10

このお住まいは当時の建築家が設計をした、大屋根が美しい木造2階建て。縁側のような書斎と、浴室と洗面室も、増築して欲しいとのことでした。また、気軽に庭に出やすいように、勝手口もつくりたいとのことでした。

高齢になると、友人や来客を招く機会は少なくなるので、応接間は寝室にすることになりましたが、それには、もうひとつの理由がありました。
このお住まいには、すでに快適な寝室があり、その部屋で、お母様の介護をしていたそうです。そのことをあまり思い出したくないので、今回のリフォームでは、ご自身の寝室を新たにすることになったのです。

プランが確定したときに、こんなエピソードがありました。事務所のスタッフが、星合さんにこう尋ねたそうです。
「大瀧は、東南の角の一番日当たりのいい場所に、」
「浴室と洗面室を配置したのですが、本当にいいのですか?」

星合さんは、答えたそうです。
「入浴も洗面も朝日のさし込む中の方が、気持ちがいいもの」
「あなたも私くらいの年齢になるとわかるわ」

「明るくゆったりと読書ができる書斎をつくりたい」というご希望に答えた、サンルームのような書斎です。

好きな読書に没頭できるように、椅子の後ろにある引き戸を開ければ、すぐにトイレがあります。また、隣の寝室に戻れば、ベッドに横になることもできます。「居心地のよさ」は、そんな隠れた配慮に支えられています。

このひとに出会わなかったら、自分の運命は変わっていただろうと、思うひとが何人かいます。星合さんも、そういうひとでした。星合さんは私にとって、大切な住まい手さんであり、手厳しい、バリアフリー住宅のご意見番でもありました。
カテゴリー
大瀧雅寛 (おおたきまさひろ)
有限会社 大滝建築事務所 代表
携帯電話:090-3069-3425
メール:ootaki@icloud.com
https://anity.ootaki.info/9920/