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大瀧雅寛 ↘

「シャワー浴も湯船にもつかりたい」高齢者マンションのリフォーム

〈9682〉

私のバリアフリー住宅の師匠ともいうべき、この住まいてさんは、長年暮らしていた住まいから、この高齢者マンションへと、生活の拠点を変えることになりました。一度立ち寄ってくれませんかと連絡をいただき訪ねてみると、『オオタキさん、我が家と同じような、シャワー浴ができて湯船にもつかれるような、アイディアはありませんか?』と、ご自宅の時のように、この高齢者マンションでも私は、課題を与えられたのでした。

「シャワー浴も湯船にもつかりたい」高齢者マンションのリフォーム

エントランスに入った瞬間、まるでリゾートホテルのようで、私は慌てました。エレベーターを降り、ホールから続く廊下はカーペット貼り。「ここで、仕事をしなければならないのか... 」、感動していた私は、次第に青ざめていきました(2018.5.08)

2018.05.08

寝室脇には、トイレ・洗面・浴室がワンルームになった、水回りスペース。洋風バスは、高齢者には使いにくそうでした。リフォームするにしても、賃貸マンションなので、現状復帰することを想定しないといけません。

「シャワー浴も湯船にもつかりたい」高齢者マンションのリフォーム

水回りは滑りやすく、住まいで最も危険な場所でもあるので、住み慣れた住まいに、できるだけ近い環境にしてあげたいと思いました。とはいえ、この限られた水回りスペースで、『シャワー浴も湯船にもつかりたい』という要望を、叶えられるのか。

「シャワー浴も湯船にもつかりたい」高齢者マンションのリフォーム

長年暮らしていたお住まいの浴室には、壁に取り付けた「座シャワー」と、またぎやすさを優先した、高野槇の据え置き浴槽がありました。ですが、今回の高齢者マンションの浴室は、ここまでのスペースがないのです。

「シャワー浴も湯船にもつかりたい」高齢者マンションのリフォーム

既存の洋風バスの解体から、工事は始まりました。床面をフラットにし、ここにご自宅のような、「浴槽」と「座シャワー」を設置します。

「シャワー浴も湯船にもつかりたい」高齢者マンションのリフォーム

またぎやすさを最優先したかったので、浴槽の高さは低く抑えました。浴槽をまたぐ時、体の向きを変える時、安全に入浴するためには、体の近くに「手すり」がくるように、直接、浴槽に取り付けました。

「シャワー浴も湯船にもつかりたい」高齢者マンションのリフォーム

高野槇の浴槽を据え置き、その上に「座シャワー」を取り付けました。浴槽の中に入ってから、シャワーを浴びてもらうのです。

このようにしか設置できなかったのですが、ひとつメリットがありました。シャワーからの水は浴槽の中に集められ、床全体に水が流れ出ないのです。さながら、浴槽そのものを、排水パンとするアイディアなのです。

「シャワー浴も湯船にもつかりたい」高齢者マンションのリフォーム

浴槽専用の水栓はなく、座シャワーのシャワーからお湯をはります。座シャワーの操作するハンドルは、洗い場側に近い左側にあったので、ハンドル操作をするために、無理な姿勢をしなくて済んだのは幸いでした。

「シャワー浴も湯船にもつかりたい」高齢者マンションのリフォーム

既存の洗面台は、座って使うには不便な形状、高さでした。体を奥まで入れられる洗面台にして、座って使いやすい高さにしました。

「シャワー浴も湯船にもつかりたい」高齢者マンションのリフォーム

トイレの脇の壁には、便器から立ち上がるための手すりがありました。もうひとつ、ドアを開閉のための手すりを、床から立ち上げました。手すりの色は既存に合わせた白でなく、鮮やかの「赤」を選びました。

「シャワー浴も湯船にもつかりたい」高齢者マンションのリフォーム

この工事を終えてからも、私は時折、ここを訪れることとなりました。バリアフリー住宅の師匠ともいうべき、この住まいてさんを訪ねる時は、私は、その後の予定を入れないようにしていました。

私の気ぜわしさを、この「師匠」に見せたくなかったのです。そんなゆったりとした気持ちでの訪問は、毎回とても楽しいものでした。

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