杉板に似合う木製面格子は、適材適所で製作する
〈9567〉
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11年前(2007年)に竣工した、この杉板貼りのお住まいに、久しぶりにお伺いしました。というのも、「木製面格子のその後」を見たかったからでした。腰窓の面格子、アルミ製ならたくさんの種類があるのですが、杉板貼りに似合うものがなく、木製で製作したのでした。来月から始まる現場は、和風な感じの外観にしたいので、木製面格子をと考えているのです。
私が小学生の頃に住んでいた家も、杉板貼りで、木製の面格子でしたっけ。窓はアルミサッシではなく、木製建具でした(2018.10.28)
2018.10.28
木製はアルミ製に比べると耐久性が劣りますが、少々工夫をしました。
その工夫というのは、縦の木の格子は、耐久性の高い「ひば」を選ぶこと。
木材を外部で使う際、特にいたんでしまうのは、水平な部材なので、
格子の取り付ける部材は、木材ではなく、ステンレスで製作しました。
「木は万能ではない」と、大工の父から学んだことがありました。
木がふさわしい部分は、木で作り、金属がふさわしい部分は、金属で作る。
木が苦手な使い方はせず、適材適所で考えたのでした。
今回もう一つ確認したかったことは、格子の隙間です。
この腰窓は、東側の朝日が差し込むので、隙間は広めです。
格子の見付け:30mmに対して、隙間:48mmでした。
おそらく、この隙間の選択が、木製面格子のキモとなりそうです。
面格子の上を見上げると、なぜか、この面だけが塗装が剥がれています。
よく見ると剥がれは直線ではなく、大きな円弧になっています。
住まいてさんに聞いたところ、今回の2度の大きな台風による強風で、
隣接する樹木の枝が、ワイパーの様に壁をこすったからなのだそうです。
北側にまわると、夏に延びた、つた状の雑草を剥がした跡が、
私には、美しく見えました。
キズであるという、「マイナス」として捉えるのではなく、
アクセントなのだという、「プラス」として捉えることができる。
そんなおおらかさと優しさを、杉板は持っている様でした。
一方、杉板に対して私ができた配慮は、屋根の出を深くして、
杉板にできるだけ、雨がかからない様にしたことでした。
屋根の出は1m程出しましたが、トンボの翅の様に極力薄く作りました。
このお住まいは、30代のご夫婦さんからのご依頼でしたが、終の住処(ついのすみか)となる様、バリアフリー配慮を求められたのでした。
スローライフ、週末住居。自由な暮らし方とバリアフリーの両立したお住まいには、複雑なデザインは不要で、シンプルな切妻屋根がふさわしいと考えたのでした。
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