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大瀧雅寛 ↘

弓なりの曲線屋根が描く、三日月型の中庭がある保育園

〈9714〉

この保育園が開園したのは、今から13年前の2005年でした。設計に1年半、施工に半年の丸2年間の仕事でした。60人定員の木造1階建ての園舎です。延べ面積は600m2ほど、一般的な住宅、6棟分に相当する大きな建物ですが、その大きさを「できるだけ小さく感じさせること」を大切にしました。この保育園は「子どもさんたちにとっての『学校』ではなく、『家』でなけれぱならない」との思いからです。

弓なりの曲線屋根が描く、三日月型の中庭がある保育園

この保育園は畑に囲まれています。ホームページをごらんになった方から、『この保育園に入園したいから、場所を教えてほしい』という連絡を、今でも度々いただきます。設計者としてとても光栄です(2018.04.02)

2018.04.02

弓なりの曲線屋根が描く、三日月型の中庭がある保育園

朝早くから登園する子どもにとって、きっと一日は長いことでしょう。保育園は、大きくて小さな「縁側のある住まい」になりました。

園舎はゆるやかな弧を描きます。園庭は三日月の形をした中庭にしました。広々とさせるより、子どもたちが安心して遊べる園庭にしたかったのです。

弓なりの曲線屋根が描く、三日月型の中庭がある保育園

ゆるやかな弧の下は、「縁側」のような廊下になっています。子どもたちの動線は、「園庭 → 縁側 → 保育室」となっています。

そのため、直接外部につながっていない保育室もあるので、各保育室には、たくさんのトップライトをつくり、採光・換気します。

弓なりの曲線屋根が描く、三日月型の中庭がある保育園

縁側の中心は天井が高くなっていて、お昼ごはんを食べるスペースです。この縁側には保育室だけではなく、職員室と厨房も面しています。子どもたちは厨房までいって、直接『ごちそうさま!』と言えるのです。

この保育園に限らず、私は「窓から見える景色」を大切にしています。窓から見える景色に想いを巡らせ、園庭の形を大切に設計しました。

弓なりの曲線屋根が描く、三日月型の中庭がある保育園

何十年も前の昭和40年代の中頃、私が初めて幼稚園に登園したとき、入園式の間ずっと、私は園庭を見ながら泣き続けていました。

何が悲しかったのかは、まったく覚えてはいないのですが、なにか「窓から外を見つめていた」ように思えるのは、なぜなのでしょうか。私の「窓のこだわり」は、この辺に端を発しているようです。

弓なりの曲線屋根が描く、三日月型の中庭がある保育園

この保育園の隣りには、私が通っていた中学校があります。中学校を卒業したのは、この保育園が竣工する25年ほど前のことです。

テニス部だった当時の私は、よくこの畑にボールを探しに来ていたのです。その中学生の私は、その後、建築の道を選び、そしてこの畑に... って、『運命』っていうやつは、やっぱりあるのですかね... 。

弓なりの曲線屋根が描く、三日月型の中庭がある保育園

Googleマップでこの保育園を見つけました。なるほど、これからの建物は、

空からの視点も大切で、空から眺めるのは鳥たちだけではなくなりました。周囲の畑と同化する緑色の屋根が、三日月型の中庭を形づくっています。

『建築は、まるでそこから生えてきたような、切ったら汁がでるように、つくらなければならない』建築家、坂倉準三の言葉を、ふと思い出しました。

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