かつて存在したことがなくても、その存在が可能であるかもしれないもの
〈9704〉
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額縁の中のそのいすは、いかにも座り心地が良さそうで、私は思わず座ってみたくなりました。ですが、その座面は親指ほどの大きさしかなく、どうやっても座れるはずがないのは、わかっているのですが、それでも、もしかすると座れるかもしれないと、私は座る方法を模索しているのです。この、不可能なのに可能であるかのように思わせる力のことを、「想像力」というそうです。
「みどりでつながる Green Marche(グリーンマルシェ) YOKOHAMA 2018」は、緑を愛する方たちでいっぱいでした。まあ、難しく考え込まないで、まずは座ってくださいよ。額縁の中からデザイナーの、そんな声が聞こえてくるようです...(2018.04.12)
2018.04.12
想像力とは潜在的なもの、仮定的なもの、かつて存在したこともなく、またおそらく今後も存在することがないだろうが、それでもその存在は可能であるかもしれないようなもの、そういったもののすべてのカタログなのです。
イタロ・カルヴィーノ『カルヴィーノの文学講義―新たな千年紀のための六つのメモ』朝日新聞社 1999
優れた芸術は、見るひと見るひと、それぞれの解釈を許容します。優れた芸術の前では、私はどんな態度をとることも自由なのです。
芸術を生み出す「想像力」もまた、一言ではいえないものなのでしょうが、この「創造力」の定義を、まずはふたつ、思い浮かびました。
まずは、『創造の原点に近づこうとする』こと。
美しいと感じたこと、感動したことを、自分の仕事の中に再現すること。
自分の仕事を通して、その美しさや感動を、他者に伝えたいと願うこと。
自分と同じ時代に生きる他者と、それを共有するだけではなく、新たな千年紀を生きる他者に、「私の辿りついた創造の原点」を譲り渡し、彼らがさらに、「創造の原点」へと近づけることを、手助けすること。
そして、『誰も創り得ないもの創り出す』こと。
常に新しいもの、1番を目指していくこと。
「1番を目指さしての2番」と、「2番でいいと思っての2番」とでは、同じ2番でも、その意味は大きく違うということを感じること。
結果は1番でなくても、その気持ちで取り込んだことを、誰にではなく、自分に対して証明できること。
「創造の原点に近づこうとする」も、「誰も創り得ないもの創り出す」も、全力で取り組んだ時でしか、大切な『何か』は見つけられないようです。
座ってみたいと思わせる、ディテール。
いや、きっと座れるはずだと思わせる、ディテール。
そうでした。私はまだ、この『奥行き』のある額縁の前に立っていました。
『NO GREEN NO LIFE』の文字も、私の心を惹きつけます。なるほど『GREEN』は、「生きるために欠かせないもの」なのですね。
そして、『生きるために欠かせないもの』は、「GREEN」以外にもありそうです。「GREEN」に置き換える言葉を、次の記事のテーマにしましょうか。
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大瀧雅寛 (おおたきまさひろ)
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