家でしかできないことってなんだろう(2018年度版)
〈9499〉
https://anity.ootaki.info/9499/
『みなさん、家でしかできないことって何だと思います?』1987年4月22日。場所は新潟県民会館の大ホール。壇上から住宅作家・宮脇檀(まゆみ)は、私たちにこんな質問を投げかけました。その4ヶ月前に設計事務所を開設したばかりの、21才の私は考えます。寝るためならホテルでもできる。食べるためならレストランがある。物をしまうためなら倉庫がある・・・ひとつひとつ考えていくと、家でしかできないことって、あるのかな・・・
2018年の大晦日、あっという間の1年でした。来年もまた、ほんとうの住まいを探求します(2018.12.31)
2025.05.01
それはですね!
家族が、デレデレすることですよ!
大ホールの客席の私たちは、「なんだ」と笑いだします。
みなさん笑いますけど、だって、道路の脇で、どこかの家族が、デレデレってしてたら、気持ち悪いでしょ!
大ホールの客席が、さらに大きくわきました。ですが、私は真剣でした。自宅でのお茶の間の光景を、幼い頃まで遡(さかのぼ)って、思い返していたからです。例の「走馬灯」の様にです。
動物は明らかに子供のために巣をつくるという。人間はそれ程単純ではないから、見栄や財産保持のためにも家をつくる。
けれど家というのが何のためにあるのか考えてみれば、疑いも無く、基本的には家族が家族らしく、デレデレし合う場所としての、最終的な意味を持つ。
それ以外の大部分の行為は、家以外の場所で可能である。
宮脇檀建築研究室『宮脇檀の住宅設計ノウハウ』丸善 1987
その後の私に大きな示唆を与えてくれた、宮脇檀の講演会。この講演会から24年後の2011年に、時間を進めてみましょうか。私は家庭を持ち、幼稚園に通う娘と家内の3人で暮らしていました。
2011年3月16日、第2グループの我が家は18時20分からの停電です。まるで我が家だけ取り残されたような、ろうそくを灯しての夕食となりました。
東日本大震災から数日後、関東地方では一日に3時間ほど、計画的に停電させることになりました。この「計画停電」は、関東地方を5グループに分け、計画的に順番に停電させていくものでした。
ろうそくの灯の中、私は「住まいの役割」をひとつ再発見しました。「安らぎ」という、日常生活そのものを共有できること。
何十枚も設計図を書き進める中で、私がチェックしていたのは、なによりも、この「安らぎ」なのでした。
私は住まいを「船」に、たとえるのが好きです。その理由は、住まいも船も、そこに乗り合わせた人たちは、運命共同体なのだと思うからです。
例えば、家族ひとりだけが、幸せだったり、悲しかったりするのではなくて、それらは、家族全員で共有するものだと思うのです。
すみません。時間切れです。
大晦日なのですが、これから打ち合わせに向かいます。2019年も、住まいについて考えていきます。
みなさま、本年はありがとうございました。
来年もお付き合いください。
よい、お年を!
カテゴリー
大瀧雅寛 (おおたきまさひろ)
有限会社 大滝建築事務所 代表
携帯電話:090-3069-3425
メール:ootaki@icloud.com
https://anity.ootaki.info/9499/