『建築家になりたいのなら、楽器をひとつ始めなさい』
〈9345〉
https://anity.ootaki.info/9345/
20代前半の私は、建築を創り上げる哲学を知りたくて、多くの建築家を訪ね歩いていた。『建築家になりたいのなら、何でもいいから楽器をひとつ始めなさい』ある建築家から、そう言われたことがあった。下のリビングから流れてくるフルートが奏でる音色に、40年前にもなるこの言葉を、ふと思い出した。
#点と点をつなぐこと #私の仕事 #bFaaaPプロジェクト
2025.01.17
私は高校時代、建築科のクラスメートと一緒にロックバンドを結成しキーボードを弾いた。ハウンドドッグの大友康平は、建築科の10上の先輩だ。高校卒業後もキーボードのレッスンを受けていたが続かず、楽器から離れてしまった。建築家になりたいことが楽器を離れた理由だったのに、建築家は私に「楽器をひとつ始めなさい」というのだ。
私は「楽器をひとつ始めなさい」の教えを活かさせていない中、娘は中学校に入学すると同時に「何か楽器を習いたい」と、フルートを始めた。隙間時間を活用し練習を惜しまず、ずいぶん上手に吹けるようになった。フルートの音は2階の書斉まで流れてきて、記事を書いている私を楽しませてくれる。
『建築家になりたいのなら、何でもいいから楽器をひとつ始めなさい』という、その理由とはいったい何だったのだろうか? 20代前半の私には理解できなかったが、あの頃から40年を経た今の私には、いくらか理解できるようなになった。次のようなことだと思う・・・
楽器を奏でるとは「音をつくること」、いわば「空気をつくること」だ。対して建築設計とは、具象的には「屋根や壁、天井や床などのそれぞれの部材に、形や寸法を与えること」だ。一方、抽象的には「空間を満たす『空気』そのものを設計すること」だ。
建築の価値は、目に見える形にあるのでなく、目に見えない『空気』にこそある。建築家の価値は、いかにその『空気』を創りあげるかにある。その空気を感じるために「楽器をひとつ始めなさい」と考えていた建築家は、私に伝えたかったのだろう。
面白いもので娘がフルートを始めると同時に、私は友人たちと共同で、車いすユーザーが楽しくピアノを弾けるピアノペダルを開発することになった。Aiバリアフリーピアノペダル「bFaaaPプロジェクト」は現在も開発進行中だ。演奏する側ではないが、私も楽器をひとつ始めることとなったのだ。
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大瀧雅寛 (おおたきまさひろ)
有限会社 大滝建築事務所 代表
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