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大瀧雅寛 ↘

深く思い出に残る、幼稚園に繋がる細い路地

〈9981〉

不思議でした。園舎や園庭よりも、この門扉に繋がる細い路地が、今でも強く記憶に残っているのです。この幼稚園に入園したのは、50年近く前です。今日、小学6年生の同窓会が地元であり、少し前に到着した私は、その理由を確かめたかったのです。

深く思い出に残る、幼稚園に繋がる細い路地

この路地は、「私」の場である家や駅前商店街と、「公」の場である幼稚園をつなぐ、『橋』でした(2017.07.09)

2017.07.09

その理由は、路地の狭さからくるのでしょうか。当時も路地は、つたの這うブロック塀に囲われていました。しかし、その狭さを理由にするのなら、昭和45年頃、近所にはいたるところ、そんな路地がありました。


この路地が、途中「くの字」に折れていることに、強く記憶に残ってしまった秘密がありそうです。

この「くの字」を通りすぎるまで門扉は見えず、不安を感じていたのでしょう。やや右に曲がり門扉が見えて、きっと安心感を感じたのでしょう。おそらく2年間、その繰り返しでした。

逆に、この「くの字」がなければ、通りから門扉まで見通せ、不安を感じることなく、記憶に残ることもなかったのでしょう。


「空間の奥性」というキーワードが、日本の都市空間の最大の特徴を読み解く鍵なのだと、聞いたことがありました。見えたり見えなかったりすることによって生じる、「空間のひだ」みたいなもの... 。


見えるもの、見えないもの、見えないのに見えたことにする。そして、見えたのに見えないことにする。そんな、ひととひととの距離を調整する建物。そして、それぞれのひとの心配り。


『空間の質』は、単に空間のひろがりにあるだけでなく、奥や深みの創造にあるはずです。後に感じることになる、自分が造った建物の「うまくできた」「うまくできなかった」のわずかな違いは、実はこのあたりに理由がありそうです。

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