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様々な居場所を「はしご」できる住まい

〈9919〉

最近気付いた住まいでの大切なこと。それは「居場所」です。居心地の良い居場所が、たくさんある住まいが、「豊かな住まい」だと気付いたのです。その時の気分に合わせて、様々な居場所を旅するような、と言うよりは「はしご」できるような住まいって、よくないですか?

様々な居場所を「はしご」できる住まい

この1階の寝室の真上に、全く同じな2階の寝室があり、同じ位置にベッドが置いてあります。外の景色や部屋の明るさが異なる、2か所の寝室がある「豊かな住まい」です。

2017.09.09

LDKに繋がる寝室に置いたベッド。ここが「ひとつめの居場所」です。

ベッドで横になっていても、LDKの奥にあるキッチンの様子まで一望できます。ベッドの端に腰をかけると、大小さまざまな窓から、外の景色を眺められます。

居場所(いばしょ)とは、居るところ、また、座るところのことであり、自分が存在する場所のことである。自分の持っている能力を、一番発揮できる分野を指すこともある。

ja.wikipedia.org/wiki/居場所

「ふたつめの居場所」は、寝室の中ににある、小さな机です。

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手紙を書いたり、ノートパソコンを開いたりするのに最適です。左側からの採光なので、右手の影が手元を暗くすることはありません。小さな机は大きな窓の脇にあるので、外にいるような気分になります。


「みっつめの居場所」は、LDKのソファーです。のんびりと座ります。

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テレビを観るのに疲れたら、庭の景色を眺めて目を休めます。ソファーの脇の大きな食器棚は、キッチンを半分だけ隠します。


「よっつめの居場所」は、LDKのダイニングテーブルです。

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そのダイニングテーブルの脇にある、小さな窓には理由があって、夜間に、左右の掃き出し窓のシャッターが閉まっても、この小さな窓からは、小さな景色が見えるのです。「この窓から眺めた雪景色は最高でした」とのことでした。


「いつつめの居場所」は、2階にある書斎の大きな机です。

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コーナー窓から見える景色は、のんびりとしていて、物語に入り込みような、深い読書をするのに最適です。

2階にあるのですが、できるだけ体に負担がかからないように、この書斎は、階段を上がったすぐの場所にあります。


「むっつめの居場所」は、浴室のベンチと浴槽です。

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小さな窓は東側にあるので、浴室を日中、明るくしてくれます。朝からでも、気持ちよく入浴できます。

入浴って、体を温めてくれるだけでもありがたいのですが、気持ちをリセットしてくれることも、ありがたいですね。入浴後は、すぐにベッドに戻って来れるよう、短い動線になっています。


そして最後、「ななめの居場所」は、2階の寝室です。

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1階と2階に、同じ大きさの寝室があります。その日の体調に合わせて、使い分けているそうです。


庭の木の実をついばむ鳥たちからは、こんな感じに見えるはずです。敷地東側の一辺が斜めになっていて、この部分を無駄にしないように、建物の外形を段々になっています。シンプルな長方形にはなりませんでした。

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1階は左側から、キッチン、ダイニング、リビング。右側の少し出っ張っているところが、1階の寝室、2階の寝室です。

工事着工前に作った、スケッチ模型は、今でも、LDKのテレビ台に載せられていました。

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設計者の中には、「バリアフリー住宅では、かえって体が弱くなる」という自論を、お持ちの方がいらっしゃいます。

寝室を和室にして、布団での就寝を勧めたり、寝室を2階につくり、階段での昇降はリハビリである、と言うのです。

しかし私は、それとは反対の立場をとります。

つまり、住まいは住まうひとに対して、無条件にやさしくあるべきだと、考えているのです。

日々の暮らしが、楽しいことばかりではないように、「体調や気持ち」も、いい時もあれば、悪いときもある。

そんな「今ひとつ」なときに、「住まうひとを、いかに優しく包み込めるか」が、住まいの最大の価値なのではと、考えているのです。

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