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大瀧雅寛 ↘

ペントハウスは、スライド屋根の天体観測室

〈9913〉

天体観測室といえば、円形ドームが代表格ですが、その細長いスリットから眺める夜空は、一体感に欠けてしまいます。この天体観測室では、屋根に大きな開口部を造り、スライド屋根をのせました。外形は左右が対称でない面白い形にして、窓際の机からは、市街地の夜景を見下ろせます。

ペントハウスは、スライド屋根の天体観測室

隠れ家の様な小さな観測所は、所長は当麻さんです。住宅地を見下ろす狭山丘陵の端にあります。家族からの避難場所が欲しいと思っている、最近の私の思いも、有形無形に生かされているかもしれません(2017.09.15)

2017.09.15

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屋上の手前には、既存の白い円形ドームがあります。その円形ドームと対比させるような、左右が対称ではない四角形の、面白い形にしました。

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南面の屋根を横にスライドさせると、1.7m角の開口が表れます。この屋根では、北側の空が見えないのですが、北側は林になっているので、もともと、空が見えませんでした。屋根も外壁も、ガルバリウム鋼板で仕上げました。

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望遠鏡の動きを、地球の自転に合わると観測がしやすくなります。望遠鏡の架台の軸を、北極星に合わせる必要があります。

望遠鏡を高めにセットし、北極星に合わせることができました。市街地での天体観測は、「光害」のために、観測の対象となると空は、東の空から天頂までの、高度が高い所に限定されてしまいます。

ですが、その範囲内でも1年かければ、色々な観測対象に出会えます。

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外観は面白い形をにしたのですが、その形が内部にそのまま現れるようにしました。屋根は構造用合板のあらわしです。

この合板の上は外断熱になっていて、屋根からの熱を防ぎます。壁はOSB合板を、化粧貼りしました。柱や梁は、赤松の集成材です。素材を生かした仕上げになっています。

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林に面した一面は、造り付けの本棚にしました。1段の高さは、天文雑誌に合わせてあります。「棚板」は間仕切りに固定せずに、上下に動かせます。

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本棚の素材は、シナ合板で、小口(コグチ)は合板を切り放しです。学校の机のように、板の重なりが見えています。

シナのよさを消さないような、水性ウレタンのクリア塗装です。背板はないので、壁のOSB合板が見えます。

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天体観測室には、エアコンがないので、通風のために北側に窓を付けました。この窓は森に面していて、景色も良好です。

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最近の天体観測は、望遠鏡とパソコンを連動させます。

パソコンを置くカウンターも造りました。眺めがいい所なので、このカウンターには、コーナー窓も造りました。賢治先生の家も、そうなっていました。

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明日、撤去する予定の足場で、セミが泣き始めました。セミは、他の昆虫よりも、成虫期間は、2週間から1ヶ月ほど。短い寿命にように思えますが、土に潜っての幼虫期間を含めると、卵として生まれから約7年、昆虫類の中では長寿なのだそうです。

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住まいてさんから「失敗してもいいから...」と、スタートした12帖ほどの小さな観測所ですが、もちろん、失敗する訳にもいかず、家1件分と同じくらいの、半年がかりで、やっとできあがりました。

この小さな観測所の所長は、こんなひとです。

https://anity.ootaki.info/9913/