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バリアフリーらしくない、バリアフリーキッチン

〈9831〉

「バリアフリーらしくない、バリアフリーキッチンにして欲しい」とのご依頼でした。車いすユーザーの家族さんがいらっしゃるお住まいです。リビングから丸見えになってしまうレイアウトなので、綺麗なキッチンにもして欲しいとのことでした。

バリアフリーらしくない、バリアフリーキッチン

このお住まいは2002年に竣工、築15年になります。今回、メンテナンス工事でお伺いすることになりました(2017.12.06)

2017.12.06

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車いすユーザーの家族さんと、高齢のお母さまのキッチンですが、

当面は車いすで使うよりも、立って使うことが多いとのことでした。

ダイニングを背にした「エル字型」のレイアウトで、

キッチンの長辺が、バリアフリーキッチンになっています。

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キッチンの天板は人工大理石にし、高さは80cmにしました。

シンクの深さは15cmと浅くしたかったので、

既製品のシンクはなく、特注製作しました。

スライドできる水切りプレートは、天板とフラットになるように、

シンクの縁にに、小さな段を付いています。

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車いすでシンクを使うためには、シンクの下部が開口する必要があります。

そのために、シンクの下は2台のワゴンになっていて、

車いすで使うときは、ワゴンを外に出します。

そのワゴンは、ゴミ箱になっています。

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床からキッチン天板までの高さは、80cm。まな板を使うには高すぎます。

シンクとコンロの間にある、引き出しの最上段にスリットを作り、

既製品のまな板を、差し込みました。

まな板は、利用する時だけ、するすると引き出します。

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キッチンと対面にある配膳カウンターとの距離は、110cmにしました。

車いすで回転できる最小限の寸法です。

エル字型レイアウトの短辺は、食器棚になっています。

吊り戸棚の高さは、車いすでも使えるように、できるだけ低くしました。

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オーダーキッチンの背面側には、ダイニングと間仕切る食器棚と、

配膳カウンターになっています。

この引き戸を出ると、すぐに玄関に出られます。

調理中でもすぐに玄関に向かい、来客の対応ができます。

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このカウンターの下部も、車いすで入ることができる、開口にしています。

また、開口の左右には、ポット、炊飯器、米びつなど、収納できます。

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配膳カウンターも、キッチン同様に人工大理石で、高さも同じ80cmです。

配膳カウンターには、引き出しや収納があるので、

配膳カウンターの上に、ものを置かないで済みますね。

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リビングのソファーからは、テーブル越しにキッチンがよく見えます。

キッチンの壁はタイル貼り、リビングからの表情が豊かになりました。


カウンターと食器棚の間は、ゆったりとスペースが確保しました。

ご両親の寝室にも繋がっているので、寝室に目が届きやすくなっています。

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このお住まいが竣工したから、あっという間に15年が経ちました。

その年月を感じさせないほどに、

大切に暮らしていただいていることが見て取れました。

確かにステンレス製キッチンに比べれば、

木製のバリアフリーキッチンは、耐久性が劣るかもしれません。

しかしこのお住まいのように、バリアフリーキッチンを、

バリアフリー住宅を、愛情かけて暮らしていただけるのなら、

いつまでも美しい状態を保つことができるのですね。

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