昼に開かれる、夜咄(よばなし)茶会(2017年)
〈9814〉
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「夜咄(よばなし)茶会」とは、幻想的な冬の夜のお茶会です。炉の季節である、冬至に近い頃から立春までの間に開かれます。本来は、夕暮れ時から始まりますが、今日の夜咄茶会は、来客に負担がかからないように、正午から開かれました。茶室を暗くし、灯台に灯を灯すと、普段の表千家の教室が一変しました。私は言葉を無くしました。
灯台(とうだい)や、行灯(あんどん)の灯の中でのお茶会です。「いす座点前家具」や「仮設床の間」など、数日にわたり、設営のお手伝いをさせていただきました(2017.12.23)
2017.12.23
普段は表千家の教室として、たくさんの方々がいらっしゃっています。
本来のお茶会は、来客は長い時間、正座することになります。しかし、膝の痛みにより正座が負担になる、来客もいらっしゃいます。
そこで、今回の夜咄茶会には、「いす座点前家具」を設営しました。楽な姿勢で、茶道を嗜んで頂けるようになりました。
今日の「風炉先屏風(ふろさきびょうぶ)」は、「富士山」でした。お茶の世界では、季節の移ろいを大切にします。2017年の富士山の初冠雪は、平年より23日遅い、10月23日でしたね。
屏風の右側には、小さく「祥雲」書かれていました。祥雲とは、「めでたいきざしの雲。吉兆の雲」なのだそうです。なるほど、主人は、来客の「吉」を願うのですね。
この背の低い灯台を、短檠(たんけい)というそうです。設営の準備を終えると、茶室を暗くし、背の低い灯台に灯を灯します。
菜種油に浸した、い草の芯がゆっくりと燃え始めました。すると、普段の教室が一変しました。
暗さに目が慣れると、無地の襖に映った、短檠(たんけい)の影は美しく、また、この灯が照らす、赤い炉縁(ろぶち)もまた、美しく妖艶です。
風炉先屏風は、道具畳のけじめをつけ、道具を引き立てます。また、「結界をはる」という役割もあるそうです。「屏風を引き立たせるために、襖は無地」にした意味を、私は理解します。
「水指(みずさし)」にも、妖艶な模様が浮かんでいます。乾いてしまうと、この模様は消えてしまうので、3日前から水を貯え、茶会が終わるまでの数時間、乾かないようにするそうです。水指ひとつにも至る、主人の気配りを、来客はいただくのですね。
ゆがみの茶杓(ちゃしゃく)。
ゆがみがあることで、茶をすくいやすくなるそうです。自然の竹のゆがみ、「短所」を「長所」として、受け止めること。
無駄なものなどない。茶の心のひとつです。艶は塗装ではなく、200年以上使い込まれた時間によるものです。
棗(なつめ)もまた、闇の中で、美しい模様が浮かび上がらせます。
来客の中でも上客の位置からは、この角度でお点前を眺めます。
「仮設床の間」に掛け軸が掛かっています。暗いので、大きな字の掛け軸がいいそうです。座敷行灯(ざしきあんどん)は、「下座(しもざ)」から、掛け軸を照らします。
さて、昼に開かれる、夜咄(よばなし)茶会が、始まります... 。
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大瀧雅寛 (おおたきまさひろ)
有限会社 大滝建築事務所 代表
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