ソーク生物学研究所の中庭と「色即是空」〈9770〉

カリフォルニアの明るい太陽の下、中庭の真ん中には、広大な太平洋に繋がるかのような細く長い水路。それ以外には「何も無い」はずの中庭は、空とも繋がることによって、「無いけれど有る」ように思えてくるのです。この印象的な中庭のデザインに、最後まで悩んだ建築家ルイス・I・カーンは、友人の建築家ルイス・バラガンに、アドバイスを求めたそうです。

ソーク生物学研究所の中庭と「色即是空」

「空へのファサード」となる佇まい。色即是空(2018.02.05)


By Saint Etienne (Own work) , CC BY-SA 2.0 de , via Wikimedia Commons.

ソーク生物学研究所は、ジョナス・ソーク博士(ポリオ・ワクチンの開発で有名な細菌学者)が、「芸術家のピカソを招いてもいいような研究所を」という彼の肝いりで、カーンに依頼したそうです。

そんな大切な依頼を受けたカーンは、友人の建築家バラガンを現地に招きました。バラガンは現地に立つと、即座に言ったそうです。

「ここには何も置くべきではない。ただのプラザになるべきだ」

「そうすればここは、空へのファサードになるだろう」と言ったそうです。

カーンもまた、すぐにバラガンのデザイン意図を理解し、

このような細く長い水路があるだけの、中庭のデザインとなりました。


色即是空(しきそくぜくう)。仏教にこんな言葉があります。

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By Jim Harper (Taken from en-wikipedia) , CC SA 1.0 , via Wikimedia Commons.

仏教に、『色即是空 空即是色』という言葉があります。

「色(しき)」を簡単にいうと、目に見えるものです。「空(くう)」とは見えないものです。

言い換えると『見えるものは即ち、見えない。見えないものは即ち見える』ということです。

さらに言い換えると『有るけれど無い。無いけれど有る』ということです。

「心」は皆さん持っておられると思いますが、見せてほしいといわれると見せることが出来ない。

即ち無いのです。しかし、心が無いかと聞かれると、有ります。

現代社会では、見えないもの即ち無いと考えがちですが、見えないものから見えるものが生まれています。

ですから、見えないものを大切にしなければ決して良いものは生まれてきません。

また、見えるものから見えない物を感じることで、その物の大切さを忘れてはいけないのです。

「見えるものと見えないもの」三木大雲 法話


カーンは、しばしば最後の巨匠と呼ばれる。それは、構造と意匠が高度な必然性の高みで融合し、その精神性を専門家だけでなく、広く一般にまで感受させることのできた建築を作り続けた最後の建築家と考えられているからである。

ルイス・I・カーン

彼の建築の基本は、白を基調とする簡素で幾何学的なモダニズム建築であるが、メキシコ独自の、たとえば民家によく見られるピンク・黄色・紫・赤などのカラフルな色彩で壁を一面に塗るなどの要素を取り入れ、国際主義的なモダニズムと地方主義との調和をとった。

ルイス・バラガン