時の流れの中で、まろやかな形になる。歳月と手のひらで仕上げる
〈9766〉
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『ファッション』という言葉と、『アート』という言葉を区別しないといけないのでしょうか。『ファッションは今は美しくても、やがて醜く見えてしまう。アートは最初醜くとも、やがて美しくなる』。スティーブ・ジョブズは、こういっていたそうです。常にジョブズはアートを、やがて美しくなるものを追求していたそうです。
大きなデッキの屋根を支える「ひば」の柱。竣工当初、柱の角は45度の面取りで仕上げました。15年以上の時間をかけて、子どもたちが綺麗な丸面に仕上げ直してくれました。デザイン(2018.02.09)
2018.02.09
住宅は、たくさんの建築材料で造られています。その建築材料は、
「愛着を感じるもの」と「愛着を感じないもの」に分けられそうです。
木材や自然素材など、命のぬくもりを感じるものには、愛着を感じます。
一方、コンクリートやアルミなど、命のぬくもりを感じないものには、
愛着を感じないようです。その「命のぬくもり」とは何でしょうか。
『建築材料は、美しく朽ちていくものでなければならない』と教わりました。私がとある建築家を訪ねた時のことです。理由を訪ねました。
『私たち住まいては、年齢を重ねていくにつれ、見た目が衰えていく』
『住まいもまた、同様に朽ちていくものでなければならない』
『経年変化のない建築材料はないので、美しく朽ちる材料は選ぶこと』
大きなデッキの屋根を支える「ひば」の柱。
竣工当初、この柱の角は45度の面取りで仕上げたのですが、
子どもたちが、綺麗な丸面に仕上げ直してくれました。
15年以上もの歳月をかけて。
斜めの柱が、ロフトへの階段代わりになる所だと、一目でわかりました。
私たちの意思の造形では、到底不可能なほど、美しく仕上がっています。
得も言われぬ柔らかな表情を見せていて、ひばがうれしそうでした。
『時間に耐える』とは、朽ちながらも、美を保てること。
形は変化していくが、朽ちても本質を失わないこと。
時の流れの中で、まろやかな形になるのですね。
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大瀧雅寛 (おおたきまさひろ)
有限会社 大滝建築事務所 代表
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