あらそうことのないように、生きるのに不要なもののひとつもないように
〈9757〉
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パウル・クレーの絵と、谷川俊太郎の詩のコラボレーション。年に数回も読む訳ではないのに、いつも手を伸ばせばすぐに取れる、机の脇の本棚にあります。この『クレーの絵本』は、愛読書と言うよりは、私にとっての、20年来のお守りのようです。この中に私が一番好きな、谷川俊太郎の詩があるのです。
表紙は『黄金の魚』。クレーのこの絵に、谷川俊太郎は『どんなよろこびのふかいうみにも、ひとつぶのなみだが、とけていないということはない』と添えています(2018.02.18)
2018.02.18
『愛』という詩です。
いつまでも
そんなにいつまでも
むすばれているのだどこまでも
そんなにどこまでもむすばれているのだ
あらそうことのないように
生きるのに不要なもののひとつもないように
そんなに豊かに
そんなにいつまでもひろがってゆくイマージュがある
愛 谷川俊太郎『クレーの絵本』講談社 1996
この本には、クレーの作品が40点あり、中でもこの『壁画』が好きです。
壁画 谷川俊太郎『クレーの絵本』講談社 1996
クレーの『イマージュ』を感じ、言葉にしたかったのですができずにいて、
ならばその『イマージュ』が、そのまま『建築』にはならないのか... 。
そんなチャンスを、幼稚園からいただきました。
保育室と園庭とをつなぐ、縁側のようなデッキ。
デッキに屋根を掛けるために、自由に柱を建て、梁をわたしました。
それは単に、クレーの自由で厳格な『線』を、
『柱や梁に、置き換えただけではない』ものを目指しました。
同じかたちもあれば、違うかたちもありますが、
たくさんある部材は、どれも全て必要な部材だけです。
『不要なもののひとつもない』のです。
たくさんの柱は直立するのではなく、斜めに立ち並び、
お互いがお互いを支えるような、『人』のかたちのように、
『どこまでもむすばれている』のです。
クレーの絵に現れているものは、私たちがふだん目にしているものとは違う。
たしかにそこには文字や人のかたちや植物らしきものが描かれてはいるが、
それを言葉にしようとすると私たちはためらう。
魂の住む絵 谷川俊太郎『クレーの絵本』講談社 1996
言葉で彼の絵をなぞることができないと私たちが思う。
クレーは言葉よりもっと奥深くを見つめている。
それらは言葉になる以前のイメージ、あるいは言葉によってではなく、
イメージによって秩序を与えられた世界である。
魂の住む絵 谷川俊太郎『クレーの絵本』講談社 1996
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