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大瀧雅寛 ↘

『トイレを居室としてしつらえなさい』

〈9752〉

私が自信を持っていた間取り図を、ある建築家に見てもらったことがありました。しばらくすると建築家から一言、『トイレを、居室としてしつらえなさい』と言われました。「玄関や居間などに比べ、トイレはデザインの必要がない空間」でしかないと考えていた、私の浅い設計思想は、その間取り図から読み取られてしまったのです。

『トイレを居室としてしつらえなさい』

建築家からそう教わったのは、25年ほど前のことです。それ以降、新築でもリフォームでも、トイレを大切に考えるようにしています。このトイレの教えだけでなく、たくさんの方々から教わったことが、私の設計の基礎となっているようです(2018.02.23)

2018.02.23

『トイレを居室としてしつらえなさい』

このお住まいのトイレは、寝室に近くにあります。右奥には洗面台があり、洗面台の脇には、ユニットバスが位置しています。コンパクトにまとめた水回りなのですが、拡がりを得たいと考えました。

インテリアは「白・グレー・木目」の3色にまとめ、住まい全体を統一し、廊下や廊下と繋がる寝室と、一体として感じられるようにしました。

『トイレを居室としてしつらえなさい』

このトイレには2方向から入れます。開けっ放しにできるトイレです。寝室に面する手前の引き戸は、2枚連動にして開口幅を広くし、その引き込み壁は、造り付けの本棚にしました。

トイレに入る前に、1冊手にとることができます。

『トイレを居室としてしつらえなさい』

一般的なトイレはドアを開けると、便器が正面にある配置が多いのですが、このトイレのように、便器が横を向いている方が、便器に腰をかけるときに、体を90度回転させるだけで済むので、使いやすいトイレになります。『横向きトイレ』と名付けています。


最近の便器の座面の高さは、420mm程が多くなりましたが、便器に腰をかけたときに、膝が90度曲がる高さです。

ですが、膝が90度曲がってしまうと、便器から立ち上がるときには、膝に負担がかかってしまい、立ち上がりにくくなってしまいます。

『トイレを居室としてしつらえなさい』

そこで便器と床の間に、便器の輪郭に合わせた樹脂材の台を入れました。厚さは25mm、便器に座ったときに、かかとが少し浮く位の高さです。

このお住まいでは、こんなひと工夫もさせてもらい、『トイレを、居室としてしつらえなさい』という教えに、私は、できるだけ近づこうとしました。

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