23年間お疲れさまでした。木製移乗台を樹脂製移乗台に
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23年前に建てさせてもらった、車いすユーザーOさんのバリアフリー住宅です。オオタキラジオをご覧頂いている方には、「おなじみのお住まい」かもしれません。今回のメンテナンス工事では、外装メンテナンスと照明器具のLED化、そしてこの移乗台の取り替えを依頼されました。
浴室はお掃除が大変な場所です。移乗台の取り替えに合わせ、「この際だ」と、1日かけて浴室の大掃除もすることになりました。いつも私がスーツ姿でないのは、いつでもこんなことができるようにとの、思いからなのです(2018.03.09)
2018.03.09
あれから23年が、経ったのですね。このお住まいは、
阪神・淡路大震災が発生した、1995年1月に竣工しました。
私が初めて造らせていただいた、バリアフリー住宅です。
この浴室は、洗面室を兼ねた3帖ほどの大きさです。
当時、開口幅の広い、浴室用の3枚引き戸はありませんでした。
この3枚引き戸は、店舗用土間引き戸を流用しました。
右側のベンチのように見えるのが、バスマット張りの木製移乗台です。
使い始めてからでも寸法を変えやすいことが、木製の長所なのですが、
木製の短所は、腐食してしまうことでした。23年間、お疲れさまでした。
当時は、木製で造るしかなかった移乗台ですが、
現在では木製ではなく、樹脂製で耐久性の高い移乗台を、
オーダーで製作してくれる、メーカーがあるのです。
この向きで、移乗台を右側にみて、車いすを移乗台に近づけます。
右手を移乗台に載せ、車いすから移乗台に乗り移ります。
移乗台に乗り移ると、車いすは濡れないように、
隣りの寝室へ押し出すと、浴室の引き戸を閉めます。
移乗台に座ると、右手側になるシャワーで体を洗います。
移乗台の高さは、浴槽の高さに合わせてあり、
この高さは、車いすの座面の高さになっています。
片足ずつ浴槽に入っていき、両足を入れると、
手すりを掴み、浴槽に身体を沈めていきます。
浴槽と移乗台の高さは、車いすの座面の高さに合わせました。
今回の移乗台の製作にあたり、大きさを少し小さくしました。
移乗台の大きさが変われば、車いすから移乗台への移乗方法も、
変わってしまう可能性がありました。住まいてOさんは、
『体力に余裕があるうちに、行っておきたい』とのことでした。
ベンチの向かい側には、カウンター式の洗面台があります。 洗面台の下部はオープンにして、膝がぶつからないようにしました。 この洗面台、正面の浴槽、右側には移乗台、「コの字型」になっていて、 洗い場は、車いすの回転半径に合わせた、正方形になっています。
この建物の竣工当時、「バリアフリー住宅」という言葉は、
まだ、一般的ではありませんでした。
また、車いすユーザーを見かけることも、少なかったようにも思います。
23年前の竣工時、29才の私は、このお住まいをきっかけとし、
「バリアフリー住宅」こそが、その後のライフワークとなるとは、
全く予感できませんでした。
そして、このOさんのお住まいが、新聞記者の方の目にとまり、
大滝建築事務所は、急展開することとなりました。
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