巳と、竜と、大蛇が剣に巻きつく石塔と
〈9696〉
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私は巳年です。大滝の滝は「竜」という旁(つくり)で、私は蛇や竜には縁を感じています。今、「巳年」を検索してみたら、巳年の性格は『鋭い感受性と直観力と思考力の持ち主』、そして、『失敗しても脱皮をするかのように、再生できる強い逆転運の持ち』とあり、「そうかな、そうかも」などと少し嬉しくなってしまいました。さて賢治の作品に、その蛇や竜が登場する話があります。私の好きなこの作品を、今日は皆さまにもご紹介させてください。
剣に大蛇が巻きついている珍しい石塔を、隣り町の公民館のブランコの隣りに見つけました。宝永七庚寅年(1710年)、諸願が叶うようにと村人が建立したものだそうです(2018.04.20)
2018.04.20
むかし、あるところに一疋(ぴき)の竜がすんでいました。
力が非常に強く、かたちも大層(たいそう)恐ろしく、それにはげしい毒をもっていましたので、
あらゆるいきものがこの竜に遭えば、弱いものは目に見ただけで気を失って倒れ、
強いものでもその毒気(どくけ)にあたってまもなく死しんでしまうほどでした。
この竜はあるとき、よいこころを起おこして、これからはもう悪いことをしない、すべてのものをなやまさないと誓いました。
そして静かなところを、求めて林の中に入ってじっと道理を考えていましたがとうとうつかれてねむりました。
全体、竜というものはねむるあいだは形が蛇のようになるのです。
この竜も睡(ねむ)って蛇の形になり、からだにはきれいなるり色や金色の紋があらわれていました。
そこへ猟師共が来まして、この蛇を見てびっくりするほどよろこんで云(い)いました。
「こんなきれいな珍らしい皮を、王様に差しあげてかざりにしてもらったらどんなに立派だろう。」
そこで杖でその頭をぐっとおさえ刀でその皮をはぎはじめました。
竜は目をさまして考えました。
「おれの力はこの国さえもこわしてしまえる。この猟師なんぞはなんでもない。いまおれがいきをひとつすれば毒にあたってすぐ死しんでしまう。けれども私はさっき、もうわるいことをしないと誓ったしこの猟師をころしたところで本当にかあいそうだ。もはやこのからだはなげすてて、こらえてこらえてやろう。」
すっかり覚悟がきまりましたので目をつぶって痛いのをじっとこらえ、
またその人を毒にあてないようにいきをこらして一心に皮をはがれながらくやしいというこころさえ起しませんでした。
猟師はまもなく皮をはいで行ってしまいました。
竜はいまは皮のない赤い肉ばかりで地によこたわりました。
この時は日がかんかんと照って土は非常にあつく、竜はくるしさにばたばたしながら水のあるところへ行こうとしました。
このとき沢山の小さな虫が、そのからだを食おうとして出てきましたので蛇はまた、
「いまこのからだをたくさんの虫にやるのはまことの道のためだ。いま肉をこの虫らにくれておけばやがてはまことの道をもこの虫らに教えることができる。」と考えて、
だまってうごかずに虫にからだを食わせとうとう乾いて死んでしまいました。
死んでこの竜は天上にうまれ、後には世界でいちばんえらい人、
お釈迦様になってみんなに一番のしあわせを与えました。
このときの虫もみなさきに竜の考えたように後に
お釈迦さまから教えを受けてまことの道に入りました。
このようにしてお釈迦さまがまことのために身みをすてた場所は
いまは世界中のあらゆるところをみたしました。
このはなしはおとぎばなしではありません。
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大瀧雅寛 (おおたきまさひろ)
有限会社 大滝建築事務所 代表
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