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大瀧雅寛 ↘

階段は、ふたつの居場所を行き来する『道』

〈9665〉

階段の1段1段の高さを、「蹴上げ(けあげ)」といい、20cm程の高さが一般的です。それは、意識をしなくて済む、高さなのかもしれませんが、ある時には、目の前を立ちふさぐ、『壁』にように感じることもあるかもしれません。そんな時は、「たかが、『段』の付いた廊下なのだ」と、思うようにしたいのですが、なかなか、そう簡単には割り切れないのです。

階段は、ふたつの居場所を行き来する『道』

近所の子どもさんたちが集まってくる、このお住まいの階段は、リビングと一体となって、まるで公園のようでした(2018.06.09)

2018.06.09

小学生の頃、私が住んでいた家は平屋で、階段はありませんでした。

その頃に従兄弟は引っ越した先は、2階建ての戸建て住宅でした。

その従兄弟の家に行くと、私はなぜか階段に惹きつけられました。

みんなが公園へと遊びに行く中、私だけが階段に座り込み、

ひとり本を読むことが大好きになり、思想の場所となりました。

階段は、ふたつの居場所を行き来する『道』

なぜ階段に惹きつけらるのか、小学生の私には、単に座りやすいとか、

見通しがいいといった、物理的なことに過ぎなかったと思います。

ですが、私も中学生入学前に、2階建ての家に引っ越すことになり、

中学生から高校生へと成長していく過程で、「本を読む」ようなことがなくなり、階段との関わり方が、変わっていったようでした。

階段は、ふたつの居場所を行き来する『道』

2階建ての戸建て住宅なら、1階には「家族が集うリビング」があり、

2階には「自分の個室」がある、空間構成になっています。

当時の私の住まいも、そうでした。

家族が集う、1階の茶の間から離れ、自分と向かい合うために階段を登る。

一人思想することに疲れた時、2階の個室から家族のいる茶の間へ下りる。

当時の私に必要だった、ふたつの居場所を行き来する『道』でした。

なぜ階段に思いを寄せるのか、最近になりわかったことはこんなことです。

階段は、ふたつの居場所を行き来する『道』

実はオオタキラジオに、階段のことを書こうと思い、 書き始めてみたら、

1週間もかかりました。思うことがたくさんあったからです。

最後に、もう一つ付け加えておきましょう。

階段には『段』があり、急ぐことはできません。

一段一段、足元をよく見なくては昇れません。

なので、私が造る階段は、家族ひとりひとりの、

足元を明るく照らしてくれるような、優しい階段にしたいのです。

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