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葛西臨海水族園と、ついていい嘘

〈9643〉

京葉線「葛西臨海公園駅」で下車して、たくさんの家族連れの後についていくと、いくつかの階段やスロープを登っていくと、目の前に現れたのは、まるで、海に浮かんでいるような、大きなクラゲでした。1989年に竣工した「葛西臨海水族園」に、29年を経て、私は初めて訪れました。すぐに建物の中に入るのではなく、まずは「空の広場」に立ち止まり、この建物を設計した、建築家の意図を読み取ろうと試みました。

葛西臨海水族園と、ついていい嘘

訪れた7月16日が「海の日」だと気づいたのは、中に入り、たくさんの人たちを見てからでした。実はこの素晴らしい建物に、29年も訪ねかなかったのには、ひとつ理由がありまして。というのも、開園当時、気になっていたヒトを誘い、一緒に行く予定があったのですが、ドタキャンされてしまい...。みたいなことがありまして...(2018.07.28)

2018.07.28

葛西臨海水族園と、ついていい嘘

オオタキラジオでは、「建物は外観が全てではない」などと、よく書いていますが、「第一印象」は雄弁であることも事実です。

建物もヒトと同様に、その外見から受け取る「第一印象」が、その後、建物やヒトを深く知っていっても、覆ることが案外と少ないことを、みなさまも体験してませんか。

葛西臨海水族園と、ついていい嘘

この扇状の「空の広場」に立つと、まるで、大きなクラゲのような、「ガラスドーム」と、その背後までに繋がる噴水池です。

「空の広場」に立つ私たちは、「ガラスドーム」を正面にして、左手がさっき降りた駅のある陸地側、右手が遠く南まで続く海側です。

体は自然と、海の方へと向かうのは、「空の広場」に立つというよりも、大きな船のデッキに立っている様に、感じているからでしょう。

葛西臨海水族園と、ついていい嘘

このエメラルドグリーンの「噴水池」は、ガラスドームの背後まで回り込み、海と一体となっているようにしか見えず、この施設全体が海に、浮かんでいるようにしか見えないのです。

葛西臨海水族園と、ついていい嘘

その先には、ヨットの帆のような、テントデッキが見えます。この建物が水族館であることを、海の施設であることを、語らずして、語っているのですね。

葛西臨海水族園と、ついていい嘘

この「海の施設であること」の表現こそ、建築家:谷口吉生は、こだわったのではないでしょうか。

葛西臨海水族園と、ついていい嘘

「ガラスドーム」の中にある、このエントランスは、3階の水族館の3階になっていて、エスカレータで、まるで、海の中に潜っていく様に、中に続いていくのです。

葛西臨海水族園と、ついていい嘘

水族館の大部分を、「空の広場」や「噴水池」の下にもぐらせ、巨大な水族館の全体を、できるだけ小さく見せているのです。いわば「嘘をつく」ように、小さく見せているのです。

水族館全体を見せてしまっては、「海と一体となっている水族館」であることを、感じさせることができなかったでしょう。

葛西臨海水族園と、ついていい嘘

話は逸れますが、建物の設計には、ついていい「嘘」と、ついてはいけない「嘘」とが、あると思うのです。ついていい「嘘」とは、ここを訪れた人たちを、「幸せにする嘘」です。

葛西臨海水族園と、ついていい嘘

もしかするとヒトにも、建物の設計同様に、ついていい「嘘」と、ついてはいけない「嘘」とかが、あるのかもしれません。最近、学んだことなのですが。

葛西臨海水族園と、ついていい嘘

葛西臨海水族園を設計した、谷口吉生の建物は、どの建物も、そこを訪ねた人に何を体験させるか、という点が素晴らしいです。

私は他にも、山形県酒田市の土門拳記念館、愛知県豊田市の豊田市美術館を、訪ねたことがあります。

GINZA SIX | ギンザ シックスも、谷口吉生の設計です。

建築家の谷口吉生の建築作品11選 | Design Magazine

葛西臨海水族園と、ついていい嘘

葛西臨海水族園公式サイト - 東京ズーネット

こちらのサイトには、たくさんの写真があります。

葛西臨海水族園 | 日本 | 世界の建築【世界建築巡り】

https://anity.ootaki.info/9643/