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月と星と願うこと

〈9627〉

野尻湖の湖畔にある、野尻湖ナウマンゾウ博物館。そこには、「月と星」と呼ばれている化石があります。ナウマンゾウの牙(きば)を「月」に見立て、ヤベオオツノジカの角を「星」に見立てた、人為的と思える、不思議で美しい組み合わせです。約4万年前の野尻湖人たちが、何かの願いをこめて並べたものではないか、と考えられています。

月と星と願うこと

「月と星」は、1973年の野尻湖発掘(長野県)で、寄り添うように見つかりました。月とペアとなれる明るい星は、何の星なのでしょうか。金星なのかなと思いました(2018.09.06)

2019.08.10

月と星と願うこと

野尻湖は、約5万年前に湖西岸付近が次第に隆起を始め、現在の湖の形に近づいてきました。約4万年前には、ナウマンゾウをもとめて、旧石器人が狩り場として利用するようになりました。このように、人と長いつきあいのある湖は、日本では他に例がありません。

野尻湖人の世界 | 野尻湖ナウマンゾウ博物館

月と星と願うこと

ナウマンゾウの化石が含まれる地層から、旧石器人類のつくった道具がいっしょに見つかりました。これらは野尻湖にいた、旧石器人類(野尻湖人)たちが残したものです。骨器を特徴とする文化を、野尻湖文化とよんでいます。今からおよそ、4.8万年前から3.3万年前の文化です。

野尻湖人の世界 | 野尻湖ナウマンゾウ博物館

月と星と願うこと

ナウマンゾウは、約2万年前に絶滅したとされています。狩猟技術が格段に進展した、旧石器人たちによる動物の狩りすぎ、いわば、人為的な絶滅だとされています。

月と星と願うこと

ですが、そのことを「なんて残酷なことを」と、私は、第三者のように批判していいのでしょうか。

もしかすると、ナウマンゾウを狩り、食糧としなければ、私のこの祖先たちは、生き延びることができず、また、今を生きる私は、存在しないかもしれないからです。

月と星と願うこと

この三日月のようなナウマンゾウの牙(切歯)と、手のひらを広げたようなオオツノシカの掌状角は、第5次発掘でよりそった状態で発見されたものです。

野尻湖人の世界 | 野尻湖ナウマンゾウ博物館

月と星と願うこと

その形と美しいならびかたから、「月と星」と呼ばれるようになりました。ところで掌状角の一辺は直線的に、たち切られたような形をしていることからも、これらの化石は「野尻湖人」が、何かの願いをこめて並べたものではないかと考えられています。

野尻湖人の世界 | 野尻湖ナウマンゾウ博物館

月と星と願うこと

4万年前、この「月と星」に、何を願ったのでしょうか。4万年後の子孫のひとり、私は考えました。

もしかすると野尻湖人たちは、この先、何万年も先まで、我が子孫たちが、楽しく暮らせることを願ったのかもしれません。

月と星と願うこと

そんなことを考えながら、善光寺に到着したのでした。

間口24m、高さ29m、2階建てのように見える入母屋屋根、300年以上も前に建てられた、本堂を参拝しながらも、「月と星」に願ったことを考え続けました。

https://anity.ootaki.info/9627/