まえがき。「老いと向かいあう住まい」を思う
〈9617〉
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遊歩道に覆いかぶさる、満開の桜の下を歩いていて、ふとわかったことがあるのです。私自身が造った住まい、他者が造った住まい。今まで私は、たくさんの住まいを見てきて、私が住まいの良し悪しを判断している、第一の基準がわかったのです。それは、「私自身の老いや、やがて訪れる死に対して、その住まいが向きあっているか」ということです。
ところざわ地域ケアの会主催の勉強会で、「障がい者の在宅自立支援リフォーム」というテーマで、お話しさせて頂いた時の、テキストのまえがきです。これも、私の仕事です( 2018.09.18)
2018.09.18
『散る桜 残る桜も 散る桜』、良寛の辞世の句です。
桜は咲いた瞬間から、やがて散りゆく運命を背負っているように、
私は生まれた瞬間から、老いることや死ぬことが決まっていました。
住まいを建てるということは、長い人生でたった一度のことなので、
もっとも輝いているといわれる、30代、40代のひとときだけに、
焦点をあてているような住まいに、してはいけないと思うのです。
住まい。私の日々の暮らしを、包み込んでくれている住まいには、
私の老いや、やがて訪れる死までも、優しく受け止めてほしいのです。
満開の桜のような人生の一番いい時にこそ、私の先に待ち構えている、
老いや死について考える、最適な時にも思えてくるのです。
老いや、やがて訪れる死を受け止めてくれる住まいは、きっと、
居心地の良さと、深いところで繋がっているはずだと思うのです。
随分と昔から、生まれる前からではと思うくらいの昔から、
ずっと桜を見てきた気がするのです。みなさんもそう感じませんか。
もしかすると、私たちの遺伝子の中には、
桜を見上げたことまで、記録されているのかもしれません。
それと同様に、「居心地のよい住まいで暮らし続けたい」とも、
記録されているかもしれないと、私は思うのです。
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大瀧雅寛 (おおたきまさひろ)
有限会社 大滝建築事務所 代表
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