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注文の多い料理店・序(8)2019年の桜

〈9483〉

小さな神社へと続く農道の脇の桜。ここを通る様になって何年も経つのに、この2本の老木が、桜なのだと気にしたことはなく、満開の桜の姿を前にして、初めてそのことに気づきました。どんな情報でも、すぐに知ることができる時代でも、自分の目と足で見つけた時の嬉しさ。私はこの年齢になり、だんだん桜が好きになりました。

注文の多い料理店・序(8)2019年の桜

『イギリス風の身なりで、猟銃を構えた2人の青年紳士が、山奥に狩猟にやってきたが、獲物を一つも得られない。迷った先で一軒のレストラン「山猫軒」を見つけ、入っていくと... 』。この『注文の多い料理店』の『序』で賢治は、創作姿勢と生き方について言及しているのです( 2019.04.06)

2019.04.06

注文の多い料理店・序(8)2019年の桜

わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、

注文の多い料理店・序(8)2019年の桜

きれいにすきとおった風をたべ、

桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。

注文の多い料理店・序(8)2019年の桜

またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、

注文の多い料理店・序(8)2019年の桜

いちばんすばらしいびろうどや羅紗(らしゃ)や、

宝石いりのきものに、かわっているのをたびたび見ました。

注文の多い料理店・序(8)2019年の桜

わたくしは、そういうきれいなたべものやきものをすきです。

注文の多い料理店・序(8)2019年の桜

これらのわたくしのおはなしは、

みんな林や野はらや鉄道線路やらで、

虹や月あかりからもらってきたのです。

注文の多い料理店・序(8)2019年の桜

ほんとうに、かしわばやしの青い夕方を、ひとりで通りかかったり、

十一月の山の風のなかに、ふるえながら立ったりしますと、

もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです。

注文の多い料理店・序(8)2019年の桜

ほんとうにもう、

どうしてもこんなことがあるようでしかたないということを、

わたくしはそのとおり書いたまでです。

注文の多い料理店・序(8)2019年の桜

ですから、これらのなかには、

あなたのためになるところもあるでしょうし、

ただそれっきりのところもあるでしょうが、

わたくしには、そのみわけがよくつきません。

注文の多い料理店・序(8)2019年の桜

なんのことだか、わけのわからないところもあるでしょうが、

そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。

注文の多い料理店・序(8)2019年の桜

けれども、わたくしは、

これらのちいさなものがたりの幾(いく)きれかが、

おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、

どんなにねがうかわかりません。

大正十二年十二月二十日 宮沢賢治『注文の多い料理店』序

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