どこかで朝は始まる、ぼくらは朝をリレーする
〈9472〉
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その住まいてさんは、アメリカにお住まいでしたので、あらかじめエアメールで送付した図面をもとに、国際電話での打ち合わせとなりました。住まいてさんが電話しやすい午後6時は、私が電話にでにくい早朝4時でした。1回の電話で2時間ほどの打ち合わせをする、そんな国際電話での打ち合わせは、2年以上続いたのでした。
朝焼けを背に高い鉄塔が佇んでいます。高い鉄塔とをつなだぐ送電線は、明け始める空のもとでは、 点と点をつなぐ様に頼もしく見えました( 2019.04.27)
2019.04.23
電話での顔の見えない打ち合わせは、普段の打ち合わせよりも疲労を感じるのでした。
住まいてさんは私との電話を終えると、今日の一日を終え、お休みになることでしょう。
一方私は、住まいてさんとの電話を終えると、窓の外は明るくなっていて、私の一日が始まるのでした。
なるほど、ひとりひとりの一日は繋がっているのかと、窓から外を眺めながらと、何だか面白く感じました。
私の大好きな詩、谷川俊太郎『朝のリレー』の一節を、ご紹介させてください。
この地球で
いつもどこかで朝がはじまっている
ぼくらは朝をリレーするのだ
経度から経度へと
そうしていわば交換で地球を守る
眠る前のひととき耳をすますと
どこか遠くで目覚時計のベルが鳴ってる
それはあなたの送った朝を
誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ
谷川俊太郎『谷川俊太郎詩集 続』思潮社 1981
アンデルセンの『絵のない絵本』は、月が世界中の空をすべりながら、そっと覗いてきたひとつひとつの物語を、「わたしの話すことを絵にお書きなさい」「そうしたら、とてもきれいな本ができますよ」と、貧しい絵描きの青年に、囁いてくれる物語です。
ある夕方のこと、ぼくはなんだかとても悲しい気持ちになって、窓際に立っていました。
そして、窓を開いて、そとを見ました。ああ、その時のぼくのよろこびといったら!
そこには、ぼくのよく知っている顔が見えたのです。
あのまるい、なつかしい顔が、遠い故郷からの、だれよりも親しい友だちの顔が見えたのです。
それは月でした。なつかしい、昔ながらの月だったのです。
アンデルセン『絵のない絵本』岩波文庫 1953
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