遊んでいる状態を作り得た時に良い仕事ができる
〈9467〉
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遊びの本質を追究した哲学書、ロジェ・カイヨワの『遊びと人間』では、遊びを4つの要素に分類し、どの遊びもそのいずれかに当てはまるといいます。32年半、私が仕事を続けてくる中で、「遊んでいる」様に仕事をすることの大切さも実感していて、この分類に当てはめてみました。
『都市・窓』猪熊弦一郎。描かれたものでなく、白や赤の小さなモザイクタイルが、散りばめられています。子どもの時の遊びを思わせます。建て替え前の東京會舘の撮影したものです( 2019.05.02)
2019.05.04
カイヨワは、遊びを4つの要素に分類しています。どの遊びも、
このいずれか、あるいは複数に当てはまるというのです。
• 1. 競争(アゴン)
• 2. 偶然(アレア)
• 3. 模擬(ミミクリ)
• 4. 眩暈(イリンクス)
私の仕事を、この4つの要素に当てはめてみました。
1. 競争(アゴン)
• 勝利という価値を得るために、相手と競い合って遊ぶこと
• サッカー、チェスなど、ほとんどの遊びはこれに属する
• 自分の練習、努力を頼りにする、その結果が反映される
「競争」に、仕事を当てはめてみると...
・受注するために他社と私とで、設計コンペで競い合うこと
・長年そこで暮らしている住まいてさんの案と、私の案とで競い合うこと
2. 偶然(アレア)
• ルーレット、すごろくなど、賭けて遊ぶこと
• 自分の努力とは無関係、運命に身を委ねるしかない
• 相手に勝つのではなく運命に勝つために、自分以外の外部の兆候を頼りにする
• 偶然は、人間だけの遊びで、動物にはないもの
「偶然」に、仕事を当てはめてみると...
・建物の間取りを考え始める時は、頭の中で間取りのパズルをする。自由に部屋の位置を変えてみる
・建築散策をしたり、建築雑誌の流し読みをする。依頼されている仕事となるべく離れた作品を鑑賞する
3. 模擬(ミミクリ)
• 何かを演じて遊ぶこと、他者になる、他者であるかに思わせる
• 俳優やタレント、飛行機や機関車のまねをする
• 架空の人物となり、それにふさわしい行動をする
• 自己を他者とすることにより、自分の世界から脱出する
「模擬」に、仕事を当てはめてみると...
・そこで暮らし始めることになる住まいてさんを真似て、この住まいは、私の家なのだと思い込むこと
・何よりも、自分が設計者だという立場を忘れること
4. 眩暈(イリンクス)
• 混乱を楽しむこと
• すべり台、ブランコ、ジェットコースター、お化け屋敷
• ぐるぐる回ったり、急速な回転落下など、一時的な知覚の安定を破壊する
• 遊園地などで、長時間待たされてでも、楽しみたい眩暈
「眩暈」に、仕事を当てはめてみると...
これは簡単です。この先のことを考えるだけでいいのですから...
「眩暈」にもうひとつ、gofujitaさんが面白い視点を加えてくれました。 「今を100%自分のために使い、自分すら忘れる状態」となった時の「遊んでいる」状態が、良い仕事をさせてくれるのではと。
「遊んでいる」とは100%自分のために時間を使うことからはじまり、
自分からさえ自由になった状態でもある。
そして、いわゆる良い仕事は、
作業に関わった人たちが「遊んでいる」状態から生まれることが多いのではないか。
振り返ると、私が良い仕事ができたと思う現場は、
「遊んでいる」状態を作り得た時、なのだと思いました。
その様な状態を作るためには、私の努力をするというよりも、
住まいてさんのご理解あってのこと、なのだ実感するのでした。
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