長い時間滞在するトイレは、トイレっぽさをなくすこと
〈9355〉
https://anity.ootaki.info/9355/
この住まいてさんはトイレの時、両足を開いてた姿勢で背もたれに寄り掛かり、長い時間座っているとのことでした。なので、できるだけ体力を消耗しないようなトイレ台を作るだけでなく、もっと楽しくできないかと、住まいてさんと一緒に考えました。
車いすから移乗しやすいように、大きな移乗台を作りたかったので、北側の一室をトイレ室にしました( 2020.01.26)
2020.02.01
この住まいてさんのように、手の力が弱い車いすユーザーの場合、トイレを自分でする人と、介助でする人とがいます。トイレを自分でする人は、車いすから移乗するために、トイレ台が必要になります。このトイレ台の形状が、住まいてさんとの打ち合わせの中でも、もっとも大切な部分なのです。
車いすから便器までの移乗は、ひとりひとり確立した得意な方法があります。この住まいてさんは、両足をトイレ台に載せて直進し、つま先が壁にぶつかるあたりで、オシリが便器に向くように 90度左回転させると、背中が背もたれに付くまで後進し、便器に座ります。
トイレ台のどこに寄り付くか、住まいてさんが入所していたリハ施設のトイレに、極力合わせました。便器を左斜め前に見る、この位置からが移乗しやすいとのことでした。これとは逆に、便器が右斜め前では、移乗しにくいとのことでした。
便器の座面の高さは、車いすの座面の高さよりも低いので、便器をかさ上げしておきました。やわらか便座の高さが、トイレ台の高さよりも 1cm高くなるようにしました(やわらか便座が沈み込むと、トイレ台と同じ高さになります)。
両足を台に載せて車いすを前進させ、座面を台に付けるとオシリも台に載せ、さらに前進します。時折、バランスを崩して後ろにのけぞってしまうことがあるそうです。車いすを包むように台を長くしたのは、その際に両手を付き姿勢を整えるためです。
トイレ台に移乗する際には、車いすが移動しないようにブレーキをかけます。黄色のフレームの左側に、小さく丸く光って見えるものが、車いすのブレーキレバーです。台の欠き込みは、車いすのフレームを避けるためだけではなく、ブレーキレバーの操作しやすさも検討しました。
便器に到着すると、手すりを利用して体を左右に動かしながら、脱衣をするそうです。そのために便器の両側には、体を左右に動かせるスペースが必要とのことでした。さらに、横になるためのスペースも必要とのことでした。
できるだけ体力を消耗しないように、背もたれを取り付け、寄り掛かれるようにしました。手すりに頭を載せることもあるそうなので、クッションを巻き付けました。
トイレでの時間が楽しくなる工夫もしました。正面の台にテレビを置き、タブレットからのコンテンツを映すことができます。トイレ台の便器の右側が広くなっているのは、向かって左上から右下への対角線を利用して、横になれるようにするためです。
もうひとつ工夫があります。天井と壁の壁紙は、ブラックライトを照射すると、光が浮かび上がるイルミネーション壁紙にしました。室内の照明を暗くすると、トイレであることを忘れてしまうそうです。
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