和室の畳をクッションフロアに張り替え、ベッドからトイレへつながる手すり
〈9337〉
https://anity.ootaki.info/9337/
この住まいにはとても思い入れがある。住まいてさんが私の師匠だからではなく、思えば私が「加齢に備えた住まい」を意識した最初の住まいだから。竣工から22年、この和室を寝室にしているお母様から、「布団からの立ち上がりに時間がかかる様になって」と、介護保険を利用した住宅改修工事を行った。
#介護保険の住宅改修 #寝室の床材変更 #ベッドからトイレへ #つながる手すり
2025.01.17
この寝室の畳は6帖だが、実質的な広さは 8帖分ある。畳の上にタンスを置かない様に、2帖分「板の間」を広げている。
今までお母様はずっと、この畳の上に布団を敷いて寝ていたそうだ。最近になり「布団からの立ち上がりトイレに行こうとする時、時間がかかってしまい困っている」とのこと。そこで介護ベッドを利用することにし、ベッドからトイレまで連続する手すりを取り付けることになった。
風情のある畳だが、ベッドを置くには相応しくないので、床材を変更することになった。通常、フローリングを貼る場合が多いが、クッションフロアを貼ることにした。
クッションフロアにした理由は、クッション性を持たせたかったこと、水拭きがしやすいことを優先したからだ。この様な床材変更の工事は、介護保険の住宅改修制度を利用することができる。
とはいえ和室に合う柄は少なく選定に迷った。サンプル帳の中から和室にぴったりな柄を見つけた。籐(とう・ラタン)の市松模様の柄。市松模様(いちまつもよう)とは、方向の違う正方形を交互に配した模様のこと。(江戸時代中期の歌舞伎役者、初代 佐野川市松がこの模様の袴を着用したことに由来するという)
介護ベッドを掃き出し窓を足になる様に置く位置が、一番しっくりきた。だがベッドの端から立ち上がった際、出入り口の引戸まで 2m以上の距離がある。この間手すりを取り付ける壁はないので、部屋の中心に、ポール型手すりを立てることにした。
和室の敷き目天井は、洋室の天井と比べると強度が弱い作り。ポール型手すりの上部はT字型になっていて、天井の敷き目の位置に合わせる必要がある。(なので手すりを立てる位置は、自由に調整することはできない)
ベッドから立ち上がりポール型手すりに手を掛け、柱に出隅に取り付けた縦手すりまで移動できる。横手すりに手を掛けながら、安全に引戸を開け閉めすることができる。
廊下に出るとすぐにトイレとなる間取りだ。このつながりが「加齢に備えた住まい」の、もっとも大切な動線だった。
90cmの横手すり伝いに、すぐにトイレに到着します。この壁は手すりの取り付けを想定し、壁下地が補強されていて、手すりを直接取り付けられた。手すりの厚さだけドア枠を壁から離してあり助かった。(ここまで考えていたんだな。22年前の設計者の私よ)
この写真を見て思い出した。奥に見える押入れも布団を出し入れしやすい様に、間口を広くしてあった。でありながら、ベッドが押入の襖を隠さない様にもなっていた。
ベッド脇の腰窓の大きさも、ベッドを置くことを見越した都合のいい場所になっていた。さて22年前の私は、そこまで考えていたのか覚えていないが、「見越していたのだ」ということにしておく。この程度の簡単な工事でも、お母様にとても喜んでもらった、それは本当ですよ。
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大瀧雅寛 (おおたきまさひろ)
有限会社 大滝建築事務所 代表
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