海の見える駅らしくない駅、日立駅
〈9329〉
https://anity.ootaki.info/9329/
「形態は機能に従う(form follows function. )」、アメリカの建築家、 ルイス・サリヴァンの言葉です。「機能性を追求していくと、結果的に美しいものになる」という思想です。このJR日立駅に訪れ、家路につく高校生たちと一緒に、壁のないガラス貼りの自由通路を歩いていると、私はこの言葉を思いました。
「どんな場合でも、直線が最短距離」と私たちは子どもの頃から知っています。日立駅は景色だけでなく、直線の美しい駅でした。建もの探訪( 2020.07.12)
2020.07.14
駅前広場に面した中央口から、自由通路は始まります。
自由通路は、貨物ヤードの上を直線で進むガラスのトンネル、貨物ヤードの向こう側のホームにつながります。
駅前の広場から、改札口を通り、ホームから電車に乗る。たくさんの人たちが利用する駅ですから、その動線はできるだけ短い方がいいでしょう。
「どんな場合でも、直線が最短距離となる」と、私たちは子どもの頃から知っています。
日立駅は、そのまっすぐな動線をガラスで包んだだけの建築のようです。その機能を突き詰めていくこと、この駅のように美しい建物になるのですね。
けれども、機能を追求しているだけでは、退屈な建築になり下がってしまいます。
海岸と並行に南北に走るJR常磐線、海に面したこの立地を活かして、自由通路のおしまいには、こんな景色が広がっていました。
展望イベントホールです。どこまでも青い水平線。この美しさを際立たせるために、天井や床などの部材は無彩色にしたのでしょう。天気や時間の変化も敏感に受け止めるでしょう。
私が出向いた時は、ちょうど高校生の帰宅の時間と重なりました。毎日通う学生さんたちは、わざわざ毎日、海を見たいとは思わないでしょうが、
海が見たくなった時には、いつでもここに来れば、海を見ることができる。そう思うだけでも、心の支えになってくれるはずです。
改札口に向かう、彼ら彼女らを見ていると、悩みごとなどないように明るく見えました。「それに比べて私は...」などと、私も高校生時代を思い出しながら、太平洋に目をやりました。
https://anity.ootaki.info/9329/