icon

アニティデザイン ↘

ハッシュタグ ↘

最近の投稿 ↘

田んぼの中の神社で、ずいぶんと昔に祈っていたことを思い出す

〈9320〉

田んぼの中にぽつんと、島のように浮かぶ小さな神社が目に入ると、急遽インターチェンジから降りて、その方向に行先を変えました。やや生真面目な鳥居をくぐり、田植えの始まった田んぼの中の参道を進みました。神社の前で手を合わせると、ずいぶんと昔にも、こんな祈る気持ちでいたことが、ふと思い浮かぶのでした。

田んぼの中の神社で、ずいぶんと昔に祈っていたことを思い出す

茨城県北部からの帰路、常磐自動車道を南に向かっていた夕暮れ。車窓から見つけた神社です。手を合わせながら、私の仕事を思いました( 2020.07.29)

2020.07.29

田んぼの中の神社で、ずいぶんと昔に祈っていたことを思い出す

20才頃の、設計事務所に勤めていた時の話です。先輩たちと一緒に製図台に向かって設計をしていると、度々、所長の友人たちが常連客のように訪ねてきました。中でも私が一番苦手だったのは、『やあ、労働者諸君!』と、寅さんよろしく、声の大きな地元では名の知れた方でした。

田んぼの中の神社で、ずいぶんと昔に祈っていたことを思い出す

その掛け声は、私たちからひと笑いを取ろうとしての言葉だとわかっていたし、経営者として才覚のある方だとも、わかってはいたのですが、私はその方が苦手だったのでした。

田んぼの中の神社で、ずいぶんと昔に祈っていたことを思い出す

なるほど、経営者の立場から見れば、私など、ただの労働者にしか見えなかったかも知れません。ですが、設計事務所に入社し2年目の私は、私自身のことを、労働者ではなく建築の修行僧だと思っていたので、労働者という言葉に敏感に反応したのでした。

田んぼの中の神社で、ずいぶんと昔に祈っていたことを思い出す

当時、下っ端だった私の担当は、数ある建売住宅の製図でした。あらかじめ手書きの間取り図をわたされ、細かい指示を受け、私がデザインできる部分はほとんどなく、それは「設計」というには、あたらないものだったのかもしれません。

田んぼの中の神社で、ずいぶんと昔に祈っていたことを思い出す

唯一私にできること、それは「この住まいで暮らす家族さんたちが幸せになるように」と祈ることでした。私は労働者ではなく、建築の修行僧なのでした。建築を愛する修行僧なのでした。

私は、製図板に貼った A2サイズのトレーシングペーパーに向かい、出来上がる建物を頭の中に作りあげ、大工が一本一本の木を組み上げていくような気持ちで、一本一本の線を引きました。

田んぼの中の神社で、ずいぶんと昔に祈っていたことを思い出す

その祈る気持ち、愛する気持ちを、35年たった今でも持ち続けていられます(途中、そうでない時期もありましたが...)。それは私の才能というより、そう思わせてくれる、住まいてさんと出会えているからなのです。

私はお陰さまで 33年間、住まいづくりの仕事をさせてもらい、あと 27年続けることが私の目標です。ですが、祈る気持ち、愛する気持ちを持てなくなった時、私は潔く、この仕事から身を引くつもりです。

https://anity.ootaki.info/9320/

アニティデザイン