今は無き、駅前の交番脇のドトール

今は無き、駅前の交番脇のドトール。建物外周の円弧に沿った窓側カウンターが、娘のお気に入りだった。出向くと誰かしら受験生の同士がいて、そんな受験生たちを店員さんたちは邪険にすることなく、応援してくれていた。やさしい空気に満たされていたと、娘は言う。

#人間は社会をつくっていきている #社会とは支え合う仕組みということである

2025.02.25

受験生たちが窓側カウンターに座ると、「これでは落ちつきませんね」店員さんがロールスクリーンを降ろしてくれた。手元が明る過ぎず、とはいえ駅前を行き来する景色を遮らない、絶妙な高さに。私が出向いたこの夜は、受験生たちの窓側カウンターに、もうひとりの受験生がいた。

この駅前の交番脇のドトールが閉店すると聞いた時、娘は悲しんだ。どうしても店長さんや店員さんたちにお礼を言いたいという。閉店となる日、最後のドトールに出向くと、たくさんのお客さんでいっぱいだった。娘がレジの前でお礼を言いながら花束をわたす姿を、私は車中から眺めながらお礼を言った。