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ドーナツ屋さんが神様だったという話

〈9242〉

いつもは夕食も大学食堂で食べているが、その日はなぜかドーナツを食べたい気分だったと娘はいう。寮の最寄り駅を降り、駅前のドーナツ屋さんに向かう。一つか二つか迷っていたら、店員さんから「5個入りがお得ですよ」と言われ、断ったつもりが5個入りセット、そのまま会計を済ませ店を出た・・・

ドーナツ屋さんが神様だったという話

#スパニッシュスタイルの洋館 #山手111番館 #ローズガーデンを見下ろすダイニング #私の幸せは誰かが支えてくれている

2025.06.05

「どうしよう、絶対食べきれない」ドーナツ屋さんを出ると考えた。友達や家内や私、食べたい人ならたくさんいる。だが娘はそう思わなかった。「そうだ。おばあちゃんに食べてもらおう」近くに暮らしているのに大学入学後しばらく会えていなかったおばあちゃんに、これから行くねと連絡をした・・・

ドーナツ屋さんが神様だったという話

ドーナツ屋さんの前からバスに乗り12分、おばあちゃんの家に着いたのは20時。おじいちゃんはもう寝ていた。こんなに近くなのに大学生になったら、あっという間に時間は過ぎた。久しぶりに顔を見せた娘をおばあちゃんは喜んでくれた。テーブルにドーナツを置き、おばあちゃんと向かいあった・・・

ドーナツ屋さんが神様だったという話

大学に入学した頃は大変で辞めたくなった、だけど頑張った、クラスメートが支えてくれて、大学が楽しくなった。尽きない娘の話を、おばあちゃんはただただ楽しそうに聞いてくれた。さながらそれはプレゼンテーションの様だった。2024年12月の中旬、これがおばあちゃんとの最後の会話なった・・・

ドーナツ屋さんが神様だったという話

「おばあちゃんが倒れて入院した」とおじいちゃんから連絡があったのは、5個入りドーナツを持っておばあちゃんを訪ねた日の翌週だった。おばあちゃんが病院から介護施設に移ると、娘は何回も面会に出向いたが、自分の名を呼んでくれなかった。「あんなに元気だったのに」と、娘は動揺し泣いた・・・

ドーナツ屋さんが神様だったという話

けれどもおぱあちゃんは頑張った。いつも誰かを励まし、誰にも迷惑をかけず、優しい顔で、本当に優しい顔で目を閉じた。さながらそれは、娘に対するおばあちゃんのプレゼンテーションだった。それは私たちに対しても。そしておばあちゃんの、ドーナツ屋さんへのお礼だったとも思うのだ。

ドーナツ屋さんが神様だったという話

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大瀧雅寛 (おおたきまさひろ)

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